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画竜点睛を欠く

タイトルの如く不完全燃焼なアラフォーブログ 本と音楽と映画が主軸

パブリックドメイン(PD)化されている映画

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パブリックドメインとは

パブリックドメイン(以下PD)とは著作権保護期間が過ぎ、もしくは放棄された為、権利が失われ公共の財産となった作品などのことを言います。直訳すると公共の領分、公共の所有、公共の権利などとなりますが、語意的に公共物でいいと思います。

過去の名作DVDなどが500円程度でコンビニ、ディスカウントショップ、新品や中古のDVDを取り扱っている店舗に置いていますが、これは権利が失効している為、DVDにする製作費コストが低いことにより、安価な流通が可能となったことから販売されている商品です。

ただ何もかもが自由になるのではなく、保護期間においてもかなり複雑に入り組んだ法的解釈がされており自分で調べていても中々に複雑すぎて腹に落ちないことが多く挙げられていたので作品を紹介する前にどうなるとPD化され、どこからが保護対象なのかという自分調べの説明をしておきたいと思います。

旧著作権法と現行著作権法と2003年の一部改正

おおむね映画作品は保護期間としてこの3つのどれかが対象となります。

旧著作権法

まず1889年(明治32年)年施行の旧著作権法ですが、団体(映画製作会社など)が著作権者の場合は作品公表後33年、著名な監督など個人が著作権者である場合は死後38年となっており、個人と団体で起算を始める箇所が大きく異なるのが特徴です。

現行著作権法

1971(昭和46年)施行された著作権法においては作品が公表された後50年という期間に改正されました。

2003年(平成15年)に一部改正

2004年(平成16年)から施行され映画は公表されてから70年間が保護対象となりました。

 

時系列に表すと以下のようになります。

 

f:id:RyuNoSuKe:20150817084048j:plain

 

いくつか判例を挙げるとより分かりやすいかと思います。

 

 

1953年問題

争点

2004年から施行された保護期間70年改正において1953年の作品が2003年(1953+50=2003)でPDとして解禁されるのかもしくは2023年(1953+70=2023)まで保護期間対象となるのかという点において争われた判例があります。

争点となったのは2003年12月31午後12時(24時)と2004年1月1日午前0時が同時点となるのか別時点となるのかで改正前が適応されるのか改正後が適応されるのか変わってくるためでした。

ローマの休日とシェーンの著作権を主張

1953年は多くの名作映画が公表された年でした。

2006年に米国法人と販売独占権を得ていた日本法人が民事訴訟を行っています。

パラマウント・ピクチャーズ社及び日本国文化庁の解釈は同時点とする見解でした。

対して既に安価なDVDを販売していた日本法人ファーストトレーディング並びにブレーントラストは別時点とする見解でした。

司法判断

地裁判決及び知財高等では別時点(同じ日ではなく異なる日付)とされ、最高裁の上告審でも一審、二審支持となり、米法人は敗訴が確定。1953年以前の団体著作物における映画作品は晴れてPDとして最高裁判例が残り、文化庁見解が覆る形となっています。

最高裁判例:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/509/035509_hanrei.pdf

もう一つ個人が著作者であるという判例を挙げてみます。

チャップリンと黒澤明

少しややこしいのは1971年の法施行以前の作品(旧法適応)で且つ個人の著作物という判断が下された場合です。旧法の方が保護期間の長い場合、旧法が適応されます。(著作権法附則7条)そして両者ともに個人の著作物であることが認められる判例が出ています。

映画の著作者は映画の製作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に関与した者をいう

チャップリンにおける判決

9作品における著作権について争われました。

チャップリンが亡くなったのは1977年12月25日なので起算は1978年1月1日からとなり旧法における個人の著作物の保護期間は38年であることから2015年12月31日までは保護対象となります。

さらに2004年の改正以後も旧法に照らした場合期間内となることから70年の保護期間も併せて対象となりました。結論として以下のようになっています。

  1. サニーサイド 1919年公表 +70年で1989年
  2. 偽牧師 1923年公表 +70年で1993年
  3. 巴里の女性 1923年公表 +70年で1993年
  4. 黄金狂時代 1925年公表 +70年で1995年
  5. 街の灯 1931年公表 +70年で2001年
  6. モダン・タイムス 1936年公表 +70年で2006年
  7. 独裁者 1940年公表 +70年で2010年
  8. 殺人狂時代 1947年公表 +70年で2017年
  9. ライムライト 1952年公表 +70年で2022年

1~7は旧法適応による2015年の方が保護期間が長くなる為、全て2015年12月31日まで。

8は改正後の保護期間の方が長いので2017年12月31日まで。

9も改正後の保護期間の方が長いので2022年12月31まで。

地裁判例:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/065/035065_hanrei.pdf

黒澤明における判決

8作品における著作権について争われました。

黒澤明が亡くなったのは1998年9月6日なので起算は1999年1月1日からとなり前述と同じく38年を足すと2036年12月31日までとなります。

監督デビューの1943年の「姿三四郎」のみで考えてみると

  • 旧法では1998+38=2036年12月31日
  • 改正後では1943+70=2013年12月31日

となり、他の作品を考えるまでも無く旧法が適応された2036年までが保護期間という結果でした。

地裁判:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/118/035118_hanrei.pdf

上記の1953年問題でも1971年以前なのでだったら旧法適応で1953+33(団体著作物の保護期間)で1986年でPD化ではないの?とお思いの方もいるかもしれませんが、1953年作品は1971年新法施行時点で18年しか経過していないので1971年の新法時まだPD化されてないこととなり、この場合は新法が適応されることとなるようです。

戦時加算

その期間と対象国

第二次大戦中に連合国側の著作権が保護されていなかったということに基づき戦前、戦中の作品へ保護期間を加算する義務を負っている法律のことを指します。(戦時加算特例法)もちろん映画だけではなく文学や音楽などすべての著作物が対象で影響は広範囲です。

連合国の主だった国はアメリカ、イギリス、フランスで加算は3794日、約10年間が対象著作物に対して加算されます。

サンフランシスコ平和条約に署名していないソ連や中国や中立国は対象となりません。

枢軸国

ドイツ、イタリア、オーストリア、ブルガリア、フィンランド、ルーマニア、ハンガリーなどは枢軸国側として参戦していた為、戦時加算が行われています。(ドイツ・イタリアは特殊事例の為 後述)

東ヨーロッパの国は意外に思われるが、反共(ソ連)、失地回復、ドイツ進駐による強制参戦などそれぞれの思惑や事情により参戦しています。

最近読んだ記事の中でこの意外な枢軸国の参戦を詳細に書かれていたので紹介しておきます。

lacucaracha.hatenablog.com

現代における不平等条約?

ドイツとイタリアに関する文部科学省のページからの引用です。

連合国高等委員会(Alliierten Hohen Kommission)指令ナンバー8第5条によって戦時加算について規定されている。工業所有権及び著作権の保護期間を延長することができるとされ、延長期間は開戦から1949年9月30日までとされていた。しかし、著作権については申出がなく、ドイツでは著作権の保護期間についての戦時加算は機能しなかった。

イタリア平和条約第15条付属書により、交戦国双方に加算の義務を課し、連合国側と双務的に6年間の戦時加算を行っている。

ドイツは戦時加算が発生しておらず、イタリアは双方において6年間ということに対して日本の戦時加算は不平等、不公平という声が多くあります。

そもそもお互いドンパチやっている時に相手のことを慮ってやるようなことを考えるはずもないので、戦後相互的な加算を行っているイタリアの事例が一番しっくりくるのではないでしょうか。

ここにも日本の戦後の呪縛が存在している感は否めません。

文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第7回)議事録・配付資料 [資料8]−文部科学省

 

 

TPPによる見直し

www.asahi.com

現在調整が続いているTPPですが、アメリカの著作権保護期間「死後70年」へ統一する動きをみせています。戦時加算も同時に見直される方向になりそうです。では現在PD化されている作品がまた保護期間延長となるのかというとそうではなく、法の不遡及の原則というものがあり、過去に遡り処罰されるということはなさそうです。

ネットで公開されている作品 

映画史の中で名作とされている作品を挙げておきたいと思います。

国民の創生

映画の父と言われるD・W・グリフィスの長編作品。非常に人種差別的な描写が多かった為、各方面から非難の嵐を受けますが、映画技法の多くが詰まっており映画史の中でも重要度の高い作品です。

無声映画ですのである程度あらすじを理解してから鑑賞するといいかもしれません。

國民の創生 - Wikipedia

淀川名画撰集 - 國民の創生

戦艦ポチョムキン

公開当時ソ連邦だったので共産主義プロパガンダ映画と目されていましたが、監督のセルゲイ・エイゼンシュテインがモンタージュ理論を構築した評価の高い作品です。上記のグリフィスのグリフィス・モンタージュとエイゼンシュテイン・モンタージュの2つの手法が有名です。

また「オデッサの階段」という映画史に残る名シーンは後のデ・パルマの作品であるアンタッチャブルでオマージュとして表現されています。

www.youtube.com

市民ケーン

映画のベストランキングでよく1位になる作品です。実在した新聞王ハーストをモデルにしたため、ハースト系の新聞から妨害工作に遭い興行成績的には散々だったいわくつきの映画です。この作品も多くの映画技法が駆使されている為、映画史を語る上で外せない革命的な映画です。

www.youtube.com

吸血鬼ノスフェラトゥ

ドラキュラ、ホラー映画の原点となるドイツ表現主義期の映画。ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」を原作とするはずがブラム・ストーカーの未亡人から権利を得られずノスフェラトゥ(不死者)という名称に変更して発表している作品です。音楽も秀逸。

カサブランカ

今回紹介している中で一番知名度の高い作品だと思います。ボギーとバーグマンという当代きっての俳優が主演だという点が時代を経てもなお多くの人に支持されるきっかけであると思います。劇中で使用されているAs Time Goes Byも有名です。

別の側面から見ると戦中の作品であったが為、所々に反独プロパガンダが埋め込まれている作品でもあります。

www.youtube.com

PD作品の参考となるサイト

パブリックドメインDVD - Wikipedia

http://www.braintrust-dvd.com/img/common/PD%20FILMS%20LIST_new.pdf

午前0時の映画祭

パブリック・ドメインDVDの未来 | 別冊戦争映画観戦記

個人でのマネタイズは可能か?

いくらPD化されている作品でも新たに著作権が付随している場合があります。例えば格安DVDの字幕ですが、その販社が自前で製作したものですので翻訳した字幕に対して著作権が生じることになります。

その点をクリアする為に個人でフィルムに字幕を付けて販売されている方もいらっしゃいます。さすがに日本語吹き替えまでは難しいでしょうけど・・・

素晴らしき哉、人生! 日本語字幕

素晴らしき哉、人生! 日本語字幕

  • Toc
  • エンターテインメント
  • ¥480

元サイト

The Baker Street Bakery > PD Movies

その他個人で字幕を付けてYoutubeにアップしてアドセンスを貼っておくという手もありますし、個人サイトで運営するという手段も考えられます。

ただここにも注意点がありましてネットにアップした場合世界中からアクセスが可能となりますが、各国の著作権の違いによりある国ではPD化されていないというような問題が発生します。(日本ではOKとなるようなローカルパブリックドメイン)

実際ネットにアップしている法人や個人は見受けられますが、各言語の字幕なのでOKなのかそれともNGなのかと非常にグレーで不透明な問題です。

最後に

ここには書ききれていない諸所の問題がまだあります。一例ですがミッキーマウスの商標権やキャラクター意匠権などです。映画の著作権が切れても音楽(サントラ)やデザインの権利が生きている場合がありますので、取り扱いには十分注意されるようにして下さい。